上村さや香さん(能登ヒバアンバサダー)

能登ヒバアンバサダー

日本大学藝術学部音楽学科助教
上村さや香

1999年生まれ。 日本大学芸術学部音楽学科情報音楽コース卒業、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科修了。 第55回ミス日本コンテストにて2023ミス日本みどりの大使を受賞。 林野庁の公式行事などを中心に森林や林業の魅力を発信している。

音楽で能登ヒバの魅力を発信する上村さんに聞く

森林と音楽の魅力に惹かれ、木のぬくもりとギターの響きが紡ぐストーリー。2023年に行われた第55回ミス日本コンテストにおいて「ミス日本みどりの大使」に選ばれた上村さや香さんは、「能登ヒバアンバサダー」としても活躍しています。能登ヒバの魅力を音楽にのせて発信する活動についてインタビューしました。

取材時に撮影

上村さんが木に関心をもったきっかけを教えてください。

上村さや香(以下上村):私は中学生の頃からギター弾き語りを始めました。高校生の時に森に囲まれたキャンプ場で演奏する会があって、鳥の鳴き声や、風になびく葉っぱの音、ギターの音色に自分の声が合わさるアコースティックな空間がとても好きだなぁと思っていました。当時はTaylor 816ceというギターを使っていて、使用している樹種としてはサイドとバックに“ローズウッド”、トップに“スプルース”とトーンウッド”と呼ばれる響きの良い代表的な輸入材ですね。アコギが大好きなので、その時から楽器と木については関心がありました。

 ミス日本コンテストに応募してから、ミス日本にはグランプリ賞をはじめ様々な賞があることを知りました。その中で私は「みどりの大使になりたい!」と思っていました。ファイナリスト期間には林野庁にて森林循環の大切さを学びました。そこで木に興味を持ち、すぐに広報官の方に質問しに行ったことを覚えています。もしかしたら私の大好きなギターで日本の森林のためにできることがあるのかなぁと思い始めていました。最終審査で私は奇跡的にみどりの大使に選んでいただき、誠心誠意、1年間の活動を行ってきました。現役後の今もこうして森林のお仕事をさせていただいたり、ご縁がつながっていることがとても嬉しいです。
 そんな私の趣味は国産木材集めで、最近のお気に入りは今日(取材時)もつけている能登ヒバのイヤリングです。名刺入れやバインダー、手鏡、髪飾りなどなど増えてきました。皆さまもぜひ日常の中で探してみてください♪

2023年4月 アンバサダー任命式

――能登ヒバとの出会いについてお聞かせください。

 上村:『みどりの大使』として、どうやって森の素晴らしさや森林循環の大切さを伝えることができるか考えていたことに出会ったのが『能登ヒバ楽器プロジェクトーATENOTE』でした。
 そこで国産木材能登ヒバを使った楽器製作があることを知り、とても嬉しかったとともに「みどりの大使としてこのギターを弾かなくては!」とかってに運命を感じていました。能登ヒバはたくさんの魅力がある木材です。(ヒノキチオールという成分が含まれていることによって、)消臭や抗菌の効果があります!すごいですよね。私のお部屋でも能登ヒバチップが消臭剤として大活躍しています。また、ヒバの香りもリラックス効果があるのでぜひ皆さんに一度大変していただきたいです。今は、檜(ヒノキ)風呂ならぬ”能登ヒバで出来たお風呂”があると聞き、とても気になっています!
 そんな魅力に溢れた能登ヒバは「音響材」としてもすごく良い音がするんです。乾燥・加工技術によって音の響きやすい材となり、私のギターは唯一無二の音色がします。その音色の奥には森林があり、林業従事者の皆様の努力と想いがあります。それが1番、好きなところで尊いところです。
 そして、能登ヒバアンバサダーに任命いただきすぐに能登ヒバ林業視察に行きました。伐採を見て「100年の木の歴史が終わり、製材され、机やギターに姿を変え、私たちの生活に寄り添う第二の人生のスタートなんだな」と感じました。そして、みどりの大使の活動で出会った全国各地の経験や林業従事者の皆様との会話をもとに、林業応援ソング「森で愛ましょう」を作詞作曲し、能登ヒバの音色とともに音楽を通して森林の素晴らしさを発信し続けています。

ーーこれまでの活動を通じて印象深いエピソードはありますか?

写真提供:上村さん

上村:全国各地でお世話になった皆様のお顔が思い浮かびますが、石川県森林公園で行われた「第37回県民みどりの祭典」に出演した時のことが印象に残っています。約2,000名が来場する石川県主催の大きな林業イベントで弾き語りライブを行いました。林業応援ソング「森で愛ましょう」を歌うとともにライブ中のMCで「私のステージ後方にあるこの木は約40年前の全国植樹祭にて当時の天皇皇后両陛下がお手植えした能登ヒバなんです」と説明をしていました。
 演奏後、馳知事と共に来場者に無料苗木配布を行った際に小学生が「演奏すごかった!後ろにある木がギターになったのが分かった!」と話してくれました。
 これってとてもすごいことなんです!「木を伐ること=悪いこと」という事実とは異なった認識をしている方も多いんです。その中で、石川県の小学生が地元の県木「能登ヒバ」に想いを馳せてくれて、さらに森林循環である「伐って、使って、植えて、育てる」を感じてくれたということだと思うんです。私の音楽で歌で声で言葉で何かが伝わったのかなぁと思い、とても嬉しかったです。

ーーアテ林業従事者や能登のみなさんへ応援メッセージをお願いします

上村:2025年2月に能登の被災地視察にいってきました。仮設住宅の中では、木製組立什器の組手什(くでじゅう)が活躍していました。組手什とは、トンカチひとつで整理棚や靴箱など、形を簡単に組み替えることができるものです。
 私はみどりの大使の時に、緑の羽根でおなじみの「緑の募金」を呼びかけていました。能登地震の発災後に、この緑の募金が「復旧支援使途限定募金」として呼びかけられ、集まった募金により被災地に組手什が届いていたんです。
私は復興に励む能登の街を歩きました。傾いた電柱や倒壊した家屋のがれき、地震により地盤が隆起した海岸など、被害の大きさと災害の怖さを感じ、現状を知ることができました。
 石川県、能登と聞くとお世話になったたくさんの方のお顔が浮かびます。能登ヒバの産地、「森で愛ましょう」のMVを撮影した場所、レコーディングをした場所、能登ヒバ林業視察、林業イベント…どの瞬間を切り取っても「能登はやさしや土までも」の言葉の通りに穏やかで優しい笑顔の現場ばかりでした。

写真提供:上村さん


 今度は能登ヒバアンバサダーとして、能登ヒバの魅力を音楽と私の言葉を通して全国にお届けしていきます!つい最近まで、木のこと、能登ヒバのこと全く詳しくなかった私が今やこんなにも魅了され、一生を通して、関わっていきたいと心から思っています。そんな能登ヒバの価値や能登の木の文化を広く伝えてまいります。
 皆さまにどこかでお会い出来ることを楽しみにしております♪

ーー本日はありがとうございました!

仮設住宅で使われている組手什(左)

木の温もりと音楽の調和は、エンターテインメントを超え、自然への想いや未来へのメッセージを届ける力を持っています。上村さんの語り口から、能登ヒバと音楽に対する深い情熱がひしひしと伝わってきます。今後も、この新たな試みが多くの方々に感動と魅力を伝え続けることを期待しています。