
木とパンの香りで子育て応援
金沢市の住宅街で能登ヒバをテーマにした「ノトヒバカラベーカリー」を訪ね、増江華希世(かずよ)代表にお話を伺いました。
――木の香りがする素敵なお店ですね。改めてどのようなコンセプトのお店なんでしょうか
増江華希世(以下、増江):はい。運営しているノトヒバカラ株式会社は、加賀木材株式会社(金沢市)などからなるカガモクグループの一員です。もともと製材などを手掛けていましたが、もっと身近なところで能登ヒバの魅力を広めようと10年ほど前にカフェを開きました。多くの人に木材を身近に感じてもらうには何をしたら良いか考えて、生活に欠かせないベーカリーから知ってもらおうと考えたんです。
――店内には子どもが遊ぶ木の遊具などが充実していて、実際に親子のお客さんも多いですね。床にも能登ヒバが使われているんですか。
増江:そうなんです。林業だけでなくあらゆる営みで少子化が問題になっています。子どもが長時間イスに座っているのは難しいので、靴を脱いで休める場所にすることが子育て応援に必須だと考えました。能登ヒバの香りも楽しめますし、床暖房はないですが本物の木のぬくもりで暖かく過ごせます。金沢市内でも靴を脱いでいられるカフェというのは珍しいと思いますよ。
――子育てを頑張っている皆さんには木のぬくもりでゆっくり癒やされてもらいたいですね
増江:まさにそれが狙いです。最初はママさんの間で口コミで広がって行ったのですが、今は色んな世代の人が来店するようになっています。遊具には能登ヒバを丸く加工したボールプールを置きました。至るところ木材づくしなのでお店の口コミにも木の香りについて書かれることが多いのですが、パンや飲み物の香りをじゃましないということを言われる方もいてうれしいです。

生きている力強さ伝えたい
――特徴的な「ノトヒバカラベーカリー」という名前は皆さんで考えたのですか
増江:開店当初のスタッフは意外と県外出身者も多かったので、実際に能登ヒバの産地を訪ねて勉強を重ねました。名前についてもいろいろな案が出ましたがやはり「能登ヒバ」をストレートに伝えたいなと思ったんです。加賀木材では能登ヒバを扱う雑貨ブランドとして「NOTOHIBAKARA」が先行していたことも決め手でした。でもオープン当初はお客さんやマスコミの方に「ヒバカラ・ベーカリー」なんて呼ばれることもあって、そのたびに説明していましたよ(笑)
――一般的にはまだ耳馴染みのない言葉なのかもしれません。能登ヒバという木についてどのような印象をお持ちですか
増江:そうですね、ぐるぐるとねじれるように伸びていくという特徴が非常に面白いと思いました。製材所の方に聞いたのですが、木材にしたときに反る方向が決まっていて、組み立てる向きによって歪んだりあるいはがっちり組み合ったりするのだそうです。関係者は大変でしょうけれど、ねじれていくところがおしゃれでもあり、生きていることを感じさせてくれる力強い部分だと思っています。
――力強さですか、お店を訪れた人にも伝わっているといいですね。いろいろなお客さんに広がっているということですが、今後の展望などはありますか
増江:新しいパンや、商品の開発にもっといろいろな人を巻き込んでいきたいなと思っています。能登ヒバの話をして評判がいいのはやはり都市部の方です。私はもう能登ヒバに関わりすぎてあるのが当たり前になってしまったのですが、まだ馴染みのない都市部の方や学生さんなどの力も借りて、もっと若い人に向けたものづくりを進めていきたいです。
――ありがとうございました。
