Noto Room(国際観光施設協会)

能登に想いを馳せる空間「Noto Room」

公益社団法人国際観光施設協会として「国際ホテル・レストラン・ショー(HCJ)」に出展した「Noto Room」の展示について、内田様にお話をお聞きしました。


Q1:まず「Noto Room」とはどのようなプロジェクトなのでしょうか?

内田様:
Noto Roomは、能登に想いを馳せていただくように構成した体験型展示空間です。私たち国際観光施設協会では、復興支援活動の一環として、地元産業と会員企業が共創し、新たな価値を生み出す取り組みを続けています。
能登の現地を巡り、森林や工芸、地域産業の声に触れ交流を深めました。また、昨年のホテルレストランショーで紹介したところたくさんの反響がありました。「木づかい ホテル都市分科会」では能登ヒバの産地と交流が深まり、デザイン温故知新 インテリア分科会」では工芸を建築デザインに取り入れる検討が始まりました。「この価値を製品単体で紹介するのではなく、当協会らしくホテルの客室空間として体験できる形にしたい」と考えました。能登ヒバを中心に、能登の自然素材・伝統技術現代技術を結集して生み出したプロダクトを用いた体験型展示空間です。Noto Roomは、その共創の結晶です。


能登ヒバで編み上げる空間構造


Q2:空間の骨格を構成する床材について教えてください。

内田様:
床には、フルタニランバー株式会社による能登ヒバ無垢フローリングを採用しています。

能登ヒバは油分を豊富に含み、水や湿気に強い特性があります。またヒノキチオールを含むため、抗菌・防虫・消臭効果も期待できます。湿度の高い日本の住環境やホテル空間に適した、非常に優れた木材です。

今回は節あり材を使用し、幅もランダムに組み合わせることで、森の自然なリズムを空間に持ち込みました。
床に立った瞬間から、空間が森の延長になる設計です。


Q3:壁面には能登ヒバ和紙が使われていますね。

内田様:
はい。リリカラ株式会社が製品化した、能登ヒバの樹皮を漉き込んだ能登仁行和紙壁紙を採用しています。この素材の大きな特徴はしなやかさです。
従来、能登仁行和紙では杉皮紙を作成しています。などの木質繊維を用いた和紙は硬さがあり、施工時は突き付けしかできませんでした。しかし今回試作した能登ヒバの繊維は柔軟性が高く、差し目地での施工が可能であることがわかりました。
継ぎ目にわずかな余白を設けることで、壁面に陰影とリズムが生まれ、呼吸するような表情をつくり出します。さらに防火性能や試行により施工性も確認し、ホテルや公共空間で使用できる自由度の高い建築素材へと昇華させました。
伝統素材が現代建築の中で新しい表現を獲得した、象徴的な取り組みです。


Q4:浴室や窓まわりにも能登ヒバが使われています。

内田様:
阿部興業株式会社よる浴室向け能登ヒバガラス戸は、乾燥工程と構造設計を工夫し、水回りでも安心して使用できるようにしています。

浴室に入った瞬間、木の香りが立ち上がる。視覚ではなく嗅覚から始まる癒しの体験です。

また、ナニックジャパン株式会社の能登ヒバ製ウッドブラインドは、薄く加工したヒバ材を高精度で成形しています。
光をコントロールする機能部材でありながら、木の風合いと香りが森の木漏れ日のような陰影を生み出します。


上質な眠りを設計する


Q5:ベッド周辺の設計思想について教えてください。

内田様:
眠りは最も身体に近い体験です。ですから触感を重視しました。

ヘッドボードクッションは株式会社谷口による「縫える木」の技術を活用しています。
極薄加工した能登ヒバに柔軟性を持たせ、クッション材と組み合わせることで、木の香りと柔らかな触感を同時に感じられる構造を実現しました。

ベッドフレームは株式会社ヒノキワークスが製作。
すのこ状構造により通気性を確保し、湿気をためず清潔な睡眠環境を保ちます。

寝具は日本ベッド製造株式会社が思想に共鳴し参画し、眠りの質そのものを支えています。


Q6:ベッドの下に敷かれている枝葉も印象的です。

内田様:
あれは能登森林組合と石川県木材産業振興協会の協力による能登ヒバの枝葉です。

森に入ると、まず足元の枝葉の香りを感じます。
緑の葉は空間に彩りをもたらし、表と裏で異なる色合いが重なり合うことで、自然なグラデーションを生み出します。


Q7:ナイトテーブルや照明についても教えてください。

内田様:
ナイトテーブルは株式会社長谷萬の能登ヒバDLT構造です。
接着剤を使わず木材をダボで組み合わせ、高い強度と環境性を両立しています。

照明は「能登仁行和紙:野集紙」を用いました。
和紙を通した拡散光が、夜の森の静けさを演出します。和紙には実際に能登の植物が漉き込まれています。大光電機株式会社が灯具提供の協力をしてくれました。

クッションは能登上布・山崎麻織物の伝統織物と、黒柿を用いた株式会社谷口の製品を配置し、触れることで素材の物語を感じられる設えにしています。


視覚の森をつくる壁画アート


Q8:壁画イメージアートについて教えてください。

内田様:
木材や和紙が触覚や嗅覚の森だとすれば、この壁画は視覚の森です。株式会社エーアンドエムによる壁画は、能登の森の深淵さとその先の光を抽象的に表現した作品です。アーティスト(ふじた氏・KAARA氏)自ら現場に来て描いてくださいました。
空間の奥行きを視覚的に拡張し、実際の部屋以上の深さを感じさせます。3点のガラスオブジェは株式会社中日ステンドアートが、前出の能登上布と糸に箔や様々なガラスの表現を用いて作ったもので、周囲を映り込ませることにより森に動きを創り出します。

静かな森の中に立っているような感覚を生む、重要な要素です。


■ この空間が目指す未来


Q9:最後に、このプロジェクトの本質を教えてください。

内田様:
Noto Roomは完成形ではありません。これは“種”です。

森の素材、地域の技術、会員企業の設計力が交わることで、新しい空間価値が生まれました。
この一室から、林業再生、伝統産業の継承、観光空間の進化へと広がっていくことを願っています。

能登に想いを馳せること。
それは過去を懐かしむことではなく、未来を共につくることなのです。

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