能登ヒバを起点に生まれる共創と観光空間の未来
インタビュー協力:
国際観光施設協会
会長:浅野 一行様 / 副会長:野出木 貴夫様 / 理事:内田 幸子様

― まず、国際観光施設協会の活動について教えてください。
国際観光施設協会は、ホテルや観光施設に関わる設計事務所、ゼネコン、サブコン、内装業者、メーカーなど約280社が集まる公益社団法人です。常勤の事務局は3名のみで、ほとんどの活動は会員企業のボランティアによって成り立っています。
十数年前から「観光施設にもっと木を使っていこう」という取り組みを続けており、空間づくりを通じて環境や地域産業に貢献することを目指してきました。これまで木づかい推進の啓蒙活動を行ってきたと同時に、共感する協会正会員の社業として多くのプロジェクトがウッドデザイン賞や林業振興コンクールなどで評価を受けています。
― 「木づかい」活動とは具体的にどのようなものですか?
単に木を内装に使うという話ではありません。
木が持つ快適性、心理的な安らぎ、環境への配慮、そして地域産業との連携まで含めて、空間価値としてどう活かすかを研究しています。
「木づかい活動」については、ホテル都市分科会を中心に約40名ほどが毎月集まり、実際の事例共有や新しい取り組みを議論しています。その積み重ねが今回の能登ヒバプロジェクトにもつながっています。
― 能登ヒバとの出会いはどのように始まったのでしょうか。
協会の復興支援委員会では、地域の産業や文化と会員企業を結びつけ、共創によって新しい商品やビジネスを生み出すことを基本方針としています。
2024年8月には協会メンバー13名で能登半島を2泊3日かけて巡り、19か所を訪問しました。森林組合、地元企業、伝統工芸の担い手、行政関係者など約20名の方々から直接お話を伺いました。
― 実際に現地を訪れて、どのような印象を持たれましたか?
まず風土に育まれたものづくりの素晴らしさに感動しました。2000年の歴史を持つ能登上布や能登の自然を漉き込む仁行和紙や、その他被災してなお、情熱を傾ける物作りの方々と出会い感動しました。
同時に、里山里海の自然の豊かさと、震災によって大きく変わってしまった風景も目の当たりにしました。その中で、能登ヒバ林業が地域を長年支えてきた重要な産業であることを知り、私たちが関われる余地があると強く感じました。
― そこからプロジェクトはどのように展開したのですか?
今回、有志の会員企業8社と能登地域の事業者7社がマッチングし、具体的な製品開発に取り組みました。これはあくまでスタート地点ですが、実際に製品として形になるところまで到達できたことは大きな成果です。
この活動をきっかけに、さらに多くの技術や素材が交わり、能登の林業再生につながっていくことを期待しています。
― その成果のひとつが「Noto room」なのですね。
はい。能登ルームは、能登ヒバを単なる素材展示としてではなく、仮想のホテルの客室に見立てた、空間全体で体験できる形にしたコンセプトルームです。
床には節あり材をあえて活かしたランダム幅のフローリング、壁には能登ヒバの樹皮を漉き込んだ和紙を壁紙として製品化したものを使用しています。従来のクラフト感にとどまらず、細く巻いてシャープに見せるなど、現代的なデザインへと昇華させました。裏打ち無しでも防火性能が確保できています。
― 協会として情報発信にも力を入れているそうですね。
はい。協会の季刊情報誌『観光施設』にて、「能登を伝える」連載コーナーを立ち上げました。毎号見開き2ページで能登ヒバを中心とした共創プロジェクトを紹介しています。
さらに専門誌『月刊ホテレス』へも転載し、ホテル運営者層にも情報が届くようにしています。単発で終わらせず、継続的に価値を伝えていくことが重要だと考えています。
― プロジェクトを進める中で課題はありますか?
やはり価値の伝え方です。
能登ヒバは香りや抗菌性、しなやかさといった付加価値を持っていますが、一般的な木材と比べると単価は高くなります。
しかし、単なる材料ではなく、空間体験を生み出す素材として評価していただくことが大切です。その価値に見合った価格だと理解してもらうための可視化と発信が欠かせません。
― 今後の展望について教えてください。
能登ルームは完成形ではなく、アイデアの種まきです。実際のホテルや観光施設での実装につなげながら、用途別のモデルを増やしていきたいと考えています。
展示や巡回型の展開など、体験の場を広げる構想もあります。能登ヒバを起点に、新しい空間価値が各地へ広がっていくことを目指しています。
― 最後に読者へメッセージをお願いします。
能登ヒバは、この地域にしかない貴重な資源であり、現代の観光空間が求める価値を備えています。
共創を通じてその可能性を広げていくことで、復興と産業再生、そして新しい観光体験が同時に生まれていくと信じています。