
アテ林業の課題と解決策
(課題1)ろうし病
漏脂病は、樹幹より多量の樹脂が流れ出るヒノキ科特有の病気で、アテでも被害が発生します。この病気は、システラ(学名 Cistella japonica)という菌が感染することにより、傷害樹脂道(ヤニツボ)が形成され発症するとされています。症状が進むと、次々に感染が広がり、腐朽・脱落が繰り返されることで幹が大きく陥没したような状態になり、材としての利用価値が低下します。

石川県林業試験場のこれまでの調査で、アテの中には漏脂病に強い系統や弱い系統が存在することがわかっています。また、直径10~20㎝で被害率が高まりますが、それ以降には症状が軽減化することもわかりました。漏脂病は、間伐が遅れた林で特に被害が大きい傾向にあるため、適正な間伐、枝打ちによる密度管理を心がける必要があります。今後、漏脂病に強い個体を選抜し、それを母樹として漏脂病になりにくい苗木の生産が必要となっています。
(課題2)林業従事者の不足
石川県の林業従事者数は、ここ 20 年間で半減し、近年は 480 人前後で推移しています。また、年齢構成については、一時期は 40 歳未満の割合が増加傾向で推移していましたが、近年は減少に転じ、60 歳以上の割合が増加しています。
石川県は令和2年度の林業従事者の目標を900名と置いていましたが、令和元年度の時点でも482人にとどまっています。
能登は特に新規就業者が少なく、担い手不足が顕著になっています。令和6年度能登半島地震はさらにこの担い手不足に拍車をかける結果となっています。
さらに、県内の生産年齢人口は、2030 年には 2010 年の約8割(605 千人)に減少すると推定されており、今後、担い手の確保はさらに難しくなることが懸念されています。
林業従事者の年間所得の平均は全産業の平均と比べ、60 万円程度低く、林業労働災害は減少傾向にあるものの、他産業と比べて依然として多いなど厳しい状況であり、その改善が急務となっています。
林業所得が少ない理由
林業所得が低い理由は「木材価格の低迷」ですが、そもそも日本は急峻な地形が多く、海外に比べ木材生産コストが高いため林業者や森林所有者の手元にお金が残らない構造になっています。
木材の利益だけでは林業者に満足な給料を払えないばかりか、伐採後の再造林まで出来ず、将来の木材資源が枯渇する懸念があります。
(解決策)アテを大径材に育てる環境を整えるには
- 適切なゾーニングや伐採プランの作成
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21世紀の森林管理に欠かせない地理情報システム(GIS)を活用しています。
GISの活用により、効率的に立木の位置やサイズ、土地の境界や撮影した空中写真や地形情報などあらゆる情報をシステムに取り込んで、林業適地の分析や伐採プランの作成が可能になっています。
- 「残す木」の選定
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作成したゾーニングに基づき、作業するエリアを決めたら、現地に行き「伐る木」と「残す木」に印をつける選木を行います。従来は伐る木だけを選んでいましたが、「大径材候補」の気にペンキを塗り、「育てたい木(育成木)」をわかるようにしてから選木を行っています。
- 小径木と中目木・未利用材の有効活用
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アテは大径木になると、スギやヒノキより高価な材になりますが、小径木(丸太の末口が14cm未満)・中目木(丸太の末口が14cm~18cm)では高価な材として扱ってもらえない特徴があります。
家具など高付加価値かつ材をたくさん使う新しい製品の開発を通じて、小径木・中目木やろうし病などでやられた木材の有効活用が求められています。