株式会社谷口(石川県金沢市)

Q1. まず、谷口社長ご自身について教えてください。どのような環境で育たれたのでしょうか?

谷口社長:
私は石川県穴水町で育ちました。林業や木材加工は、この地域では特別な仕事ではなく、暮らしの延長線上にある産業でした。ただ、最初から木の仕事をしていたわけではありません。
若い頃は澁谷工業株式会社に勤め、九州全域を担当して、百貨店や酒造メーカーなど、本当にさまざまな現場を回ってきました。

その中で実感したのが、「いいものは、場所に関係なく、きちんと価値を伝えれば評価される」ということです。
一方で地元に戻ってみると、能登の木は素材として本当に良いのに、「どうせ田舎の木だから」「安くしないと売れない」という空気が根強く残っていた。その違和感が、ずっと頭の片隅にありました。


Q2. 株式会社谷口では、どのような事業に取り組んでいるのでしょうか?

谷口社長:
私たちは、自分たちを単なる製材会社だとは思っていません。
木を“材料”ではなく、“素材”として次の用途へつなげる会社だと考えています。

0.08ミリまで薄く加工した木のシート、ミシンで縫える木、折り紙のように折れる木。
最初は「そんなこと、木でできるわけがない」と何度も言われました。でも、常識の中で仕事をしている限り、産業は縮小していく一方です。

10年以上、失敗の方が多い中で試行錯誤を重ねてきました。今では、家電や生活用品など産業用途としての木材開発を、全国の企業やデザイナーと一緒に進めています。


Q3. なぜ住宅用途ではなく、産業分野へ進出する必要があると考えたのですか?

谷口社長:
住宅用途の木材は、もう構造が変わっています。
今は、加工済みの輸入材が主流です。規格が揃っていて、すぐ使えて、価格も読みやすい。現場からすれば自然な選択です。

ただ、その市場だけを前提に「国産材も頑張ろう」と言っていても、正直どうにもならない。
だから私は、住宅用途だけを見ている限り、国産材に未来はないと考えるようになりました。

建材ではなく、生活用品、家電、工業用途まで含めて、木の使い道そのものを広げる。
その中で、能登ヒバを「加工された素材」として産業に届けることが、必然だったんです。


Q4. 能登ヒバの魅力について教えてください。種類もいくつかあるそうですね。

谷口社長:
能登ヒバと一言で言っても、実はいくつか種類があります。
代表的なのが、カナアテ・クサアテ・マアテです。

カナアテは非常に硬く、耐久性が高い。ただし油分が多く、においや色が移ることがあるため、用途を選びます。
一方で、マアテやクサアテは油分が比較的少なく、においや色移りが起こりにくい。日常的に触れる製品や、生活に近い用途には、こちらの方が向いているケースも多い。

「どれが一番いい木か」ではなく、
「どの用途に、どの木が合うか」を見極めることが、加工の仕事だと思っています。


Q5. 地域事業者との連携について、具体的に教えてください。

谷口社長:
私は、「能登の素材は、能登の人が加工して外に届ける」形をつくりたいと思っています。
その象徴的な取り組みの一つが、エフラボさんとの協業です。

エフラボさんは、縫製やファブリックの技術を持つ能登の事業者で、私たちは一緒に能登ヒバを使った枕の開発を進めています。
私たちは素材と加工の部分を担い、エフラボさんは製品としての完成度や使い心地を高める役割を担う。
一社ではできないことを、役割を分けて一緒につくる。これが、今の能登に必要な形だと思っています。


Q6. 地域連携を進めるうえで、意識していることはありますか?

谷口社長:
原木のまま安く出すのではなく、加工・デザイン・使い方まで含めて価値をつくることです。
そのためには、「うちは素材だけ」「うちは加工だけ」と線を引いてしまうと、うまくいかない。

また、穴水町商工会議所などでも、「付加価値をつけて売る」という考え方を繰り返し話しています。
「穴水のものだから安くしないと売れない」のではなく、
最初に売りたい価格を決めて、どうすればその価格で評価されるかを考える。

その視点を、地域の事業者と共有していくことが、連携の土台になると思っています。


Q7. 2024年の地震では、穴水工場も大きな被害を受けたと伺いました。再建についてはどのように考えていますか?

谷口社長:
正直に言って、穴水工場はかなり大きな被害を受けました。設備も建物も、一度は完全に止まりました。

それでも、「やめよう」とは思わなかった。
それは、若い社員が「ここで続けたい」と言ってくれたからです。

すぐに元通りにするのは現実的ではありませんが、無理をせず、段階的に再建していくつもりです。
穴水は、丸太を切るだけでなく、加工の産地として積み重ねてきた場所です。
ここで工場をなくしてしまったら、能登から「加工」という選択肢が消えてしまう。それだけは避けたいと思っています。


Q8. 「山を守る」という言葉が印象的です。その思いについて教えてください。

谷口社長:
私はよく、「木を植える人、切る人と仲良くなりたい」と言っています。
木を安く買うだけなら、顔を合わせる必要はありません。でも、それでは山は守れない。

加工する側が付加価値をつくり、木の価格をきちんと上げる。
そうして初めて、山に人が入り続けることができる。

山を守るというのは、環境の話ではなく、仕事を守ることだと思っています。
仕事が続かなければ、人はいなくなるし、山も荒れてしまう。その現実を、私たちは直視しないといけないと思っています。


Q9. 最後に、能登復興とこれからの産業のあり方について、どう考えていますか?

谷口社長:
私は、
能登は「加工の場所」、金沢は「営業の場所」
と役割を分けるのも一つの考え方だと思っています。

能登には素材と加工技術があり、腰を据えてものづくりができる。
一方で、営業や情報発信、外との接点は金沢や東京の役割が大きい。

山を守ること、工場を再建すること、地域事業者と連携すること。
これらはすべて、続く仕事をつくるための話です。

復興という言葉で終わらせず、
産業として続く木の仕事を、能登からつくっていきたいですね。

目次

会社概要

株式会社谷口
1947年創業。石川県金沢市に本社を構え、木工品・木製生活雑貨の製造・販売を手がける。
原木の選定から製材、加工、仕上げまでを一貫して行い、木の個性を活かしたものづくりを続けてきた。
伝統的な木工技術を基盤にしながら、現代の暮らしに寄り添う製品開発にも取り組んでいる。

代表取締役社長谷口 正晴
所在地〒920-0027 石川県金沢市駅西新町2丁目19番17号
創業1947年
設立1980年
事業内容木製工芸品・生活雑貨・インテリア製品の製造および販売
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